
匿名のSNSいじめに巻き込まれた中学生たちと、その親世代の揺らぎを交錯させて描く長編。少女期の友情と裏切り、傷つけ合いの先にある回復の気配を、静かな筆致で掬い上げる。淡いピンクとブルーグレーが溶け合う空を背に、大きな樹の根方の岩棚へ並んで腰かけた二人の少女。制服姿の後ろ姿だけが描かれ、表情は隠されたまま海の方角を見つめている。タイトルは白い明朝で空に浮かび、装画のにじみと文字の余白が呼応する。閉じ込められた季節と、その先にあるはずの広い水平線を、一枚の絵が静かに繋いでいる。

著七河迦南
装丁新潮社装幀室
装画田中寛崇
新潮社 / 2016年
文学・評論