
賀川豊彦の妻ハル——夫の影から同志へ、ひとりの意志を持つ女性として立つまでの姿を、作者が声を借りるように描き出す評伝文学。表紙は淡い青の空をバックに、眼鏡をかけた横顔の女性ふたりが重なるように並ぶ手描きのイラストレーション。空には鳥が飛び、桜の花びらが舞い、画面右側にはやわらかな筆致の墨文字でタイトルが大きく置かれる。前を歩いた女と、後から続く女。時を越えて二つの横顔が出会う構図そのものが、本書のテーマを静かに告げている。

著知念実希人
装丁川谷康久
装画いとうのいぢ
新潮社 / 2015年
文学・評論