
海辺の小さな喫茶店を舞台に、ひとりの少女と店員の青年が織りなす出会いと再生の物語。透明感のある水彩タッチで描かれた人物は、白いシャツに黒のエプロンを締めた青年と、セーラー服姿の少女が並び立ち、ケーキと飲み物を手にしている。背景には額装された海の風景画が並び、店内の温かな照明と窓辺の青い光が静かに溶け合う。タイトルは縦組みの明朝体を白地に重ね、装画の落ち着いた色調を損なわずに据えられている。穏やかな筆致と物語の余白が呼応し、海と月のあわいに灯る場所の気配を立ち上げている。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論