
夜よる傍に」というタイトルが、夜の時間にそっと寄り添う気配を呼び起こす一冊。物語の輪郭は多くを語らず、ただ夜と人との距離だけを表題と装画に託すような佇まいがある。表紙はくすんだ黄一色を地に、墨の細い線描で少女の振り返る姿と俯瞰の街並み、降り注ぐ雨筋を描き出す。下部には兎と鯨らしき白い輪郭がかすかに浮かび、英題のアウトライン文字が画面に薄く溶ける。線と余白だけで成立する画面が、夜の静けさと心細さを同時に抱え込んでいる。
著岸本章
装丁吉岡秀典+佐藤翔子+平良佳南子
彰国社 / 2024年
アート・建築・デザイン