
アウシュヴィッツに送られた双子の少女を主人公にした長編小説、その邦訳版。一面に咲き乱れる赤いポピーの只中、白い服に金髪の三つ編みを揃えた二人がぴたりと寄り添って立ち、背景には収容施設らしき建物がうっすらと描かれる。絵筆の質感を残した油彩風のタッチは、鮮烈な赤と少女たちの白を際立たせながらも、画面全体をどこか夢の中の光景のように和らげている。残酷さに直接触れず、花の海の美しさに痛みを忍ばせる装画が、姉妹の運命を静かに予告している。

著川野芽生
装丁柳川貴代
装画山田緑
東京創元社 / 2022年
文学・評論