
コロナ禍のろう者家族の孤独を真摯に描く〈デフ・ヴォイス〉シリーズ第4作。家庭という最も近しい場で交わされる声と、そこから取りこぼされる声に耳を澄ませる長編小説である。淡い若草色を背景に、ツインテールの少女が片手をそっと耳元に添えた線描の装画が静かに置かれる。手描きの細い書き文字が画面を斜めに横切り、タイトルと人物のあいだに余白の呼吸を生む。柔らかな緑とくすんだピンクの衣服の対比が、語られない言葉の手前にある気配をそのまま手渡してくる。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論