
京都を思わせる架空の街「深泥丘」を舞台に、日常のすぐ隣にある異界へと滑り落ちていく短篇連作の第三集。怪異と現実の境目が曖昧になっていく感覚を、淡々とした筆致で積み重ねていく。表紙は深い青を基調に、白銀の髪をした少女と黒猫を浮かび上がらせた一枚絵。瞳のわずかな光と、輪郭をぼかすように溶ける夜の色が、こちら側とあちら側の境界線を曖昧にしている。手前に身を寄せる二匹の黒猫が、見えない何かを連れてくる使いのようでもある。物語の「うすらさむい」距離感を、画面そのもので体現した装丁。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論