
土砂崩れに孤立した館で起こる連続殺人を、若き名探偵不在のまま生き残った者が解き明かす——「館」ミステリの新地平を切り拓く一作。カバーには、岩塊の落下する黄褐色の断崖と、双塔を構えた古城めいた館が緻密な絵画調で描かれ、空には硫黄色の光が立ちこめる。崩落の只中という不穏な情景に、白抜きの明朝体タイトルが縦書きで大きく重なり、下半分は金箔めいた帯がずっしりと土の質感を受け止める。崩れゆく土壁の向こうに閉じ込められた謎を、装画と書体の重量感そのものが視覚化している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論