
モンゴル帝国を築いたチンギス・カンの生涯を描いた長編歴史小説、全十七巻の完結巻。草原から黒水城、砂漠へと至る帰還の途上で、主人公が静かに死の気配を感じとる場面が中心に据えられる。表紙は深い藍鼠を地に、白の細線で猛々しいたてがみと蹄を描いた騎馬の図を配し、その上に「天地」の二文字を太く滲んだ金で重ね、「十七」の朱印が物語の終着を告げる。墨絵の硬質な線と金箔めいた書の質感が拮抗し、長大な紀伝が大地と天の双方に解け落ちていく終巻にふさわしい静けさを湛えている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論