
夕暮れの草むらにひとり佇む少女を描いた、異界とこの世のあわいを巡る連作短編集。セーラー服姿の人物がカバンを提げ、夕焼けに染まる空を背に立つ情景がイラストで描かれる。ピンクから紫へ滲むグラデーションの空、逆光に沈む人物のシルエット、足元の草に舞う淡い光の粒が、現実から少しだけずれた時間の手触りを伝える。タイトル文字は明朝の大ぶりな黒字で縦に据えられ、空の彩度をそのまま受け止める重しの役を担う。郷愁とほの暗さが拮抗する装いが、日常の隙間に迷い込む物語の入口を静かに開いている。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論