
江戸の養生所「毛玉堂」を舞台に、人と動物のあわいに生まれる情を描く時代小説。淡い橙の地に、にじみを残した筆致で三匹の犬猫が並び、葉や朱い実をあしらった蔓草が画面の上辺を縁取る。中央には太い明朝で大書きされた「毛玉堂」、その傍らに小さく囲み罫で添えられた「お江戸けもの医」の角書きが、絵草紙のような体裁を引き締めている。帯の深い緑が地色とよく響き合い、ふくよかな毛並みの温かみと、診療所の物語が持つ穏やかな手触りを画面のうちに重ね合わせている。
著辻村深月
装丁鈴木久美
装画北澤平祐
講談社 / 2021年
文学・評論