
木々や草花の記憶、生と死のあわいを静かに見つめる短篇集。家族や友人を亡くした人々が、夜の暗がりのなかで何かを思い起こす――そんな小さな物語が束ねられている。表紙は青と緑を基調にした植物画で埋め尽くされ、クレマチスらしき大輪の花や細やかな葉が画面いっぱいに敷き詰められる。左上に紅葉した一枝だけが暖色で差し込み、夜の森に灯る記憶の燠火のように見える。中央には余白を残した白い短冊が置かれ、朱の題字と黒の著者名が静かに立ち上がる。鬱蒼と茂る青の森と、そこにぽつりと開く白い窓。物語の奥行きを、装丁がそのまま映している。

著重松清
装丁新潮社装幀室
装画スカイエマ
新潮社 / 2014年
文学・評論