
角川ホラー文庫の人気シリーズ第五作。妖人(あやびと)と呼ばれる異形たちの秘密を探る妖琦庵を舞台に、人魚伝承にまつわる怪異と人の業が交錯する一篇。表紙は二人の男性を中央に大きく配したイラストで、伏し目がちな青年の白い肌と漆黒の和装が、背後で牙をのぞかせる険しい男の姿と対をなす。淡い青緑の鱗のような背景、滴り落ちる赤、金の差し色が、静と動・聖と禍を同じ画面に封じ込めている。タイトル文字は端正な縦組みで、絵の妖気を引き締める役を担う。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論