
第二次大戦下のパリ、ホテル・リッツを舞台にした諜報サスペンス。原題「The Paris Spy」が示すとおり、華やかな社交の場に紛れ込んだスパイの物語である。カバーは深い青を基調に、燭台や金の額装が連なるホテルの一室を描き、黒のドレスに長手袋をまとった赤毛の女性が中央に立つ。零れ落ちる真珠、橙のバラ、舞い散る花弁が画面右側を彩り、上部の小さなタグに英語の原題が添えられている。優雅さと不穏さが同居する筆致が、戦時下に潜む二重生活の緊張をしずかに匂わせている。

著逸木裕
装丁岡本歌織
装画雪下まゆ
東京創元社 / 2020年
文学・評論