
若くして命を絶った水泳の天才・綾部蓮をめぐり、彼と関わった四人の視点から謎と恩寵を辿る連作ミステリ。失われた像を、残された者の記憶から少しずつ縁取っていく。表紙は水中から見上げた水面の写真で、深い青と無数の細かな気泡、差し込むまばらな光が、息をひそめた静けさを湛える。明朝体の白い題字には「さざなみ」のルビと「Sahasrara」のローマ字が添えられ、波紋のように音もなく重なる。水面のゆらぎが、語り手たちの記憶の像と静かに溶け合っていく一冊。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論