
梅雨どきに熟す前の果実が静かに落ちる現象「ジューンドロップ」を題に冠した小説。誰かが落ちていく時間、こぼれ落ちる感情の手触りを、瑞々しい筆致で描き出す一冊。白を大きく取った余白に、淡いピンク髪で目を伏せる人物画と、水滴・ひよこ・花弁などのモチーフを散りばめた小さなコマ割りが配される。漫画的なフレームと水彩のにじみが同居し、シャボン玉のような円が全体に浮遊する。透明感と不安定さが共存する画面は、果実が落ちる瞬間の静けさをそのまま紙面に置き換えたかのようだ。

装丁岡本歌織
装画原倫子
マガジンハウス / 2024年
文学・評論