
日々の足元にある「自分にとってのスポットライト」を掬い上げる短編集。表紙には夕暮れ前の小さな公園が描かれ、赤い滑り台と白いベンチを背に、本を抱えた制服姿の少女が一人佇んでいる。淡い緑と青の水彩のような筆致が、誰にも気づかれない時間の静けさを引き寄せる。タイトル文字は白く抜かれて画面の上半分に大きく置かれ、舞台の照明のように少女の輪郭を浮かび上がらせる。誰の人生にも訪れる、ささやかで決定的な一瞬を、装画と余白が静かに証言している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論