
自分と他者を比べる視線、その奥にある羨望や戸惑いをすくい取る短篇集。誰かと並べたときに揺らぐ「わたし」のかたちを、静かな筆致で照らし出す。表紙は淡いミントグリーンを地に、青く色づいた葉の繁みのなかへ白い椿のような花を散らし、その中心に小さく描かれた人物がひとり佇む。明朝体のタイトルは余白を縫うように縦組みされ、葉の隙間からのぞく姿の頼りなさを引き立てる。茂みに半ば埋もれながらこちらを見返す視線が、題に滲む問いの所在をそっと示している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論