
人ならざるものが棲む骨董屋「妖奇庵」を舞台にした、怪異と人の境界を描く連作ホラー。本作は赤子の泣き声をめぐる夜話を軸に、人外の業と情を静かに掬い上げる。表紙は薄紫の地に、和装の青年と片膝を立てた人物が寄り添うように配され、背後には黒い影が翼のごとく広がる。鮮やかな青のシャツと裸足の素肌、ひと筋の赤い髪が陰の中で際立ち、毛筆書きの黄色いタイトルが余白を切り裂く。退廃と耽美の間にある気配が、夜の闇に潜む物語の手触りをそのまま装いに移している。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論