
戦国武将・明智光秀の生涯を、出自も名前も身分も偽り続けた「うそつき」として描き直す長編。歴史の表舞台に立つ前後の闇に光を当て、修羅の道を駆け抜けた一人の男の輪郭を再構成する。表紙は燃え盛る炎を背にした兜の武者を大胆に切り取り、片目をのぞかせた厳めしい面頬の造形が画面の大半を占める。題字は筆勢の残る白い手書き文字で縦に大きく配され、橙と黒の重い色面に風のような余白を生む。荒ぶる戦火の絵と書のかすれが、嘘で武装し続けた男の覚悟と脆さの両方を静かに浮かび上がらせる。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論