
声優への夢に破れた主人公が、祖母の故郷である台南を旅する七日間を描く長篇。土地の人々との出会いを通じ、家族の記憶と自身の人生をたどり直していく物語である。カバーには、緑の木立に覆われた小路をバイクが行く風景画が、絵具を厚く重ねる手数の多いタッチで描かれる。黄・橙・桃色の光が路面に散り、亜熱帯の湿度と眩しさが立ち上がる。題字は端正な明朝で中央に据えられ、絵の喧騒を静かに受け止めている。遠い土地の光を、紙の上に呼び戻すような一冊。
著三浦ゆえ 平成女子性欲研究会
装丁鶴丈二
装画白根ゆたんぽ
文藝春秋 / 2014年
エンターテイメント