
江戸の浮世絵摺師・安次郎を主人公とする人情時代小説のシリーズ作。父と子が織りなす市井の暮らしと、職人としての矜持を静かに描き出す一冊である。淡い水色の地に、藍縞の着物をまとう父と、緑の着流しに山吹色の帯を結んだ幼子が背を寄せて座る浮世絵調の人物画が配される。横顔の穏やかな視線と、子が手にする小さな玩具らしきものが、言葉少ない親子の時間をそのまま掬い上げる。色面の余白と細やかな線描の調和が、物語の温度をやわらかく予感させる装丁である。

著新津きよみ
装丁大原由衣
装画高杉千明
実業之日本社 / 2022年
文学・評論