
崎義一を主人公に据えた、優雅で穏やかな日々を綴るシリーズの一篇。表紙はエリカの小花と濃緑の葉がタペストリーのように画面全体を覆い、その前景で淡色のスーツをまとった二人の青年が寄り添い、ヴァイオリンを奏でる。背後の楕円の額には遠い夕景がのぞき、枝のあいだには黄色い小鳥が点々と止まる。室内庭園のような密度と、絵本のような静謐が同じ画面に同居し、題字はクリーム色で柔らかく置かれる。装画と書名が、物語の品ある時間そのものを差し出している。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論