
突然の雨に打たれる夜、ひとりの人物の背中越しに描かれる物語。視線の先には霞んだ街並みが広がり、誰にも語られなかった時間が静かに流れていく。表紙は油彩のような筆致で、振り返る人物の半身を中央に据える。髪や肩を伝う水滴、その向こうに沈むビル群は青灰のグラデーションに溶け、画面全体に細い雨の縦線がかかる。タイトルと著者名は左肩に細い明朝で控えめに置かれ、絵の湿度を損なわない。降りしきる雨が、登場人物の輪郭そのものを物語にしている。

著PerrinValérie、高野優、三本松里佳
装丁鈴木久美
装画agoera
早川書房 / 2023年
文学・評論