
フランスの墓地管理人を主人公に、亡き人々の記憶と生者の哀しみを静かに編み上げる長編小説の下巻。淡い黄の地に、ピンクの薔薇と紫のラベンダーが絵筆の跡を残したまま咲き、中央には楕円の額縁の中に白い服の少女が緑の中を歩く油彩風の小景が据えられる。手描きの柔らかな筆致と明朝体タイトルの細い縦組みが余白を分け合い、欧文原題と訳者名は控えめな黒で添えられる。記憶という名の小さな窓が花々の只中に開いているような、追想と再生の物語を包むのにふさわしい一冊。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論