
宇佐美まことによる長編ミステリ。夜の街、月、そして人の業を静かに照らし出すような物語の気配が、表紙の一枚絵に凝縮されている。暗い室内から窓越しに外を望む構図で、青と黒の濃淡で塗り重ねられた油彩風の筆致が、湿度のある夜気を立ち上らせる。窓の向こうに浮かぶのは、淡く白む月と、点々と灯る街明かり。タイトルと著者名は淡い黄に置かれ、室内の闇に呼応するように、ただ一点だけ温度を持って光る。閉ざされた空間から世界を覗く視線が、物語の入口そのものとして提示されている。

著PerrinValérie、高野優、三本松里佳
装丁鈴木久美
装画agoera
早川書房 / 2023年
文学・評論