
狂言誘拐に手を染めた兄弟が、人生を賭けて守ろうとしたものを問う長編ミステリー。表紙では、青い服の青年が梯子の脇に腰を下ろし、手元の何かに視線を落としている。筆致の残る絵画調の人物像は、朝焼けとも夕暮れともつかぬオレンジの空気に沈み、紙の左縁には書名の文字が滲むように透けて置かれる。白い縦長のパネルに収めた清潔な題字と、絵のなかへ拡がる影の題字。明と暗、見える秘密と隠された秘密——「朝と夕」という二つの時間の対比が、装丁全体に静かに通底している。

著PerrinValérie、高野優、三本松里佳
装丁鈴木久美
装画agoera
早川書房 / 2023年
文学・評論