
海辺の町を舞台に、少女たちの日常と小さな出来事をやわらかな筆致で描いた連作短編集。バウムクーヘンという素朴な菓子を介して、人と人が緩やかにつながっていく気配が漂う。カバーは水彩タッチのイラストレーション。青い海と空をバックに、セーラー服の二人がバウムクーヘンを手にして立ち、足元には紫陽花、奥には路面電車や三脚カメラが配される。木のテーブルや椅子越しに俯瞰する構図で、物語の小道具がそのまま舞台装置のように並ぶ。タイトルは手書き調の明朝で空の青に重ね、画面全体に夏の光と物語の入り口を同時に置いた一冊。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論