
顔がない、脳がない、心臓が三つある——海で生きる無脊椎動物たちの不思議な生態を、図鑑というより観察ノートのような距離感で紹介する一冊。表紙は淡い水色を背景に、クラゲ、ヒトデ、ナマコ、イカ、タコといった生きものを版画めいたタッチで点在させ、それぞれに吹き出しで小さな解説を添える構成。手描き風の太い書き文字タイトルと、青と朱の二色を基調にした素朴な配色が、博物学的な情報量をやわらかい絵本の手触りに変えている。「ありえない」生態を、驚きより親しみのほうへ寄せて開いていく装丁。

著村井理子
装丁吉池康二
亜紀書房 / 2021年
文学・評論