
東日本大震災のとき盛岡の高校生だった伊智花が、震災から十年の時間をたどりながら、人びとの経験や思いを語る声を紡いでいく長編小説。第165回芥川賞候補作。表紙は、淡い水色や黄土色、薄紅の絵具を短く刷いた筆触が白い余白に散らばり、氷柱を思わせる縦長の輪郭がいくつも立ち上がる構成。タイトルと著者名は細い明朝で縦に置かれ、絵の余白に静かに溶け込んでいる。語りえなかった声が、にじむ色のあわいから少しずつ立ち上がってくるような佇まいだ。

著平谷美樹
装丁谷口博俊
装画宮川雄一
講談社 / 2014年
文学・評論