
江戸の闇に紛れて怪異と対峙する南町奉行所の同心を描く、あやかし時代小説シリーズの一冊。提灯を提げた町人風の男と、刀を背にした着流しの侍が、夜の石畳に立ち止まる場面が描かれる。藤色から青へ沈む夜空、紅く滲む灯りの反射、足元を横切る黒猫が画面に静かな緊張を走らせ、奥には人ならぬ気配のような影が薄く立ちのぼる。書名は太い明朝で縦に大きく配し、墨と提灯の朱だけで江戸の宵闇と妖しさの両方を立ち上げる装画が、物語の世界をそのまま一枚に閉じ込めている。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論