
南の島を舞台に、少女たちのひと夏を描く青春小説。半袖シャツに赤いネクタイ、紺のチェックスカートの制服姿の少女が、靴のまま浅瀬に立ち、風に髪をなびかせて遠くを見つめている。背後には入道雲の湧く青空と、光を散らす水面が水彩のタッチで広がる。タイトルは鮮やかな黄で大きく置かれ、その下に細い欧文の副題が淡く重ねられて、和文の重さと欧文の軽さが交互に響く。眩しさと心許なさを同居させた一枚が、手のひらに収まるほどの楽園という言葉の輪郭を、静かに立ち上げている。

著碧野圭
装画新井陽次郎
講談社 / 2021年
文学・評論