
江戸・吉原を舞台に、百両もの値がついた秘本をめぐる物語。花魁言葉「ありんす」を冠したタイトルが、廓の風俗と謎解きが交差する時代小説であることを告げている。表紙は青い瞳の少女が一冊の本を胸元に開く構図で、簪の珊瑚玉、菊の地紋を散らした淡黄の打掛、垂れ落ちる白い短冊状の紙が淡い金地に溶け合う。タイトル文字は朱と黒の縦組みで右上に大きく据えられ、絵の繊細さを引き締める。秘めやかな書物と艶やかな少女像が、江戸の闇に潜む物語の気配を静かに立ち上がらせる。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論