文学・評論
なりたくて妖精になったわけじゃない
田中経一
妖精」と呼ばれることを望まずに生まれた者の姿を、タイトルそのものが告げる一冊。願いと現実、与えられた役割と本来の自分との間で揺れる主題が予感される。深い紫とマゼンタに沈む夜の情景の中、赤い花々の海に長い黒髪の人物が身を横たえ、奥には灯火のような淡い光が滲む。縦組みの白い和文タイトルに、繊細な手書き風の英文「She never wished to be a fairy」が寄り添う構成。幻想の濃度と静かな諦念めいた気配が、表題の重みと深く響き合っている。