
落とした携帯を見知らぬ男に拾われたことから始まる、平成のストーカーサスペンス。携帯電話というかつての新しい道具に潜む不安を、いち早く小説の題材にした一作の復刊である。表紙は画面に亀裂の入ったガラケーを大写しにし、そのひび割れの奥に女性の顔が滲み出すように合成されている。タイトルは荒い筆致の白文字で叩きつけられ、深い闇と赤い帯がコントラストを生む。割れた液晶越しに覗き込まれる感覚そのものが、物語の不穏さを先に伝えてくる装丁である。

著綾辻行人
装丁鈴木久美
装画遠田志帆
KADOKAWA / 2023年
文学・評論