
17歳のいとこ同士、礼那と逸佳がアメリカを旅する物語の上巻。少女たちの「場合」という限定が、世界の広さと内面の繊細さを同時に立ち上げる。淡いブルーグレーの地に、セピアの線描で水色のマグカップ、その縁に止まる小鳥、足元のスプーンに角砂糖をついばむもう一羽を配した、銅版画風の細密なイラストレーション。タイトルと著者名は明朝で控えめに置かれ、余白がたっぷり残されている。日常の小さな器のまわりに息づく二羽の鳥の距離感が、少女たちの旅の手触りをそのまま装丁に写している。

著仲村つばき
装丁織田弥生
装画藤ヶ咲
集英社 / 2020年
文学・評論