
札幌在住の著者が日々の暮らしや酒、季節の機微を綴ったエッセイ集。寒さを愛おしむような北国の日常が、軽妙な筆致でひとつひとつ拾い上げられていく。鮮やかな黄色の地に、湯気の立つ温泉に浸かる猿たちと頬を染めた人物が線画で描かれ、盆にのった徳利と猪口がさりげなく添えられる。タイトル文字は手描き風の太字で躍り、白い岩肌のあいだに「ダンゴ虫的」とつぶやくような副題が置かれる。明るい黄と素朴な線が、寒空の下にも灯る小さな温もりを軽やかに示している。

著井上荒野
装丁大久保伸子
装画メリヤスミドリ
集英社 / 2024年
文学・評論