
寄り添い、離れ、また並んで歩く——ふたりの女性が長い道を行く姿を描いた長編小説。赤いキャリーケースを引く一人と、隣を歩くもう一人の後ろ姿が、これから先のひと続きの時間を予感させる。カバーは水彩で描かれた一本道の風景。淡い空、左右に広がる黄緑の田畑、足元にのびる青みがかった影が、白を多く残した余白とともに穏やかに溶け合う。タイトルは明朝体で空にそっと置かれ、絵の透明感を損なわない。歩むことそのものを肯定する物語に、にじみと余白で息をする装画がよく響いている。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論