
大正期から続く東京會舘を舞台に、戦後の再建から建て替えへと連なる時代の中で、人々の記憶と「場所」との関わりを綴る連作短編集の下巻。建て替え後の新館を背景に、館に集った客たちの物語が静かに紡がれていく。淡い水色のテーブルクロスを思わせる地に、金縁の白い皿と紅茶らしき赤、革表紙の手帳、万年筆、グラスが水彩で柔らかく配される。皿の中には新館の姿が小さく描き込まれ、長い時間の中で交わされてきた会話と所作の余韻を、卓上の静物としてそっと立ち上げている。

著石川直樹
装丁田部井美奈
カバー写真石川直樹
毎日新聞出版 / 2018年
文学・評論