
終電間際、ふらりと立ち寄れる小さな食事処を舞台にした連作短編。深夜に灯る温かな器とそこで交わされる短い会話を描く、生活に寄り添う物語が綴られる。表紙はトレイを手にしたエプロン姿の店主を中央に据え、窓の外には三日月と街の灯、店内にはランプの橙、床の飴色、本棚の落ち着いた茶が重なる。手描き調のタッチで光源を丁寧に描き分け、夜更けの静けさと、扉を開けた瞬間に迎えられる安堵をひと続きに見せる装画が、ページをめくる前から物語の温度を立ち上げている。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論