
日常のすぐ隣にひそむ違和や、よく似た誰かの気配を扱う短篇集。妻、家族、街並み——身近なものの輪郭がふいに揺らぎ、存在の確からしさを問い直していく。表紙は晴れた空と立体的な高架のような構造物を背景に、ピンクのワンピース姿の人物と、白いシャツに薄紫のパンツを履いた後ろ姿の人物が並ぶイラスト。フラットな塗りと淡い陰影、地面に長く伸びる影が、穏やかな景色のなかに名づけがたい距離をつくる。鮮やかな黄の題字が、その違和をそっと指し示している。

著知念実希人
装丁川谷康久
装画いとうのいぢ
新潮社 / 2018年
文学・評論