
戦後ドイツの小さな町に眠る沈黙と、家族が抱えた過去を掘り起こしていく長編ミステリ。原題「Wer das Schweigen bricht」が示すとおり、語られなかった記憶に手を伸ばす物語である。カバーは左右で異なる世界を継ぎ合わせる構成。左半分には霧にかすむ針葉樹林のモノクロ写真、右半分には赤い髪と青い肌で塗り分けられた女性のイラストが配され、白いタイトル文字が両者をまたぐように置かれる。沈黙の風景と、それを破ろうとする視線。分割された画面そのものが、表題の構造を静かに体現している。
著HighsmithPatricia、柿沼瑛子
装丁川名潤
装画Edward Hopper
河出書房新社 / 2022年
文学・評論