
ライツヴィルを再訪したエラリイが、「何がどうなっているのか」としか言いようのない事件に巻き込まれていくクイーン円熟期の長編。新訳版として復活した文庫ミステリである。表紙には、赤と青の二色で刷られたトランプの背面が宙に放られたように散らされ、装飾的な縁取りや細密な紋様まで版画調のタッチで描き出されている。地は生成色に近い淡い紙肌で、タイトルは黒の角ゴシックが大きく縦に置かれ、図像と文字が互いの余白を譲り合う。二枚一組のカードが舞う構図そのものが、二重・二組という主題を静かに示唆している。
著森山光太郎
装丁早川書房デザイン室
装画風間雷太
早川書房 / 2021年
文学・評論