
閉ざされた山あいの村で起こる暴動と狂気、そこに居合わせた父と幼い娘が逃れられるのかを追うサスペンス。漆黒の地にぽつりと描かれるのは木の柄の手斧、刃面はわずかに鈍く光り、宙に浮くように静止している。白の明朝体で組まれた縦書きの題字には小さくルビが添えられ、抑制の効いた書体が緊張を引き締める。下部の帯は一転して白地、赤い飛沫が散り、来るべき惨事を静かに予告する。沈黙する黒、一本の凶器、そして血を思わせる赤——三色の構成が物語の不穏を担う。
著乃南アサ
装丁大久保明子
装画杉山巧
文藝春秋 / 2018年
文学・評論