
ニューヨーク近代美術館(MoMA)を舞台に、絵画と人の関わりを描いた短編集。美術館という場所が抱える熱や祈り、そこで働く人々の眼差しを、静かな筆致で立ち上げていく。カバーには鏡に向かう女性を描いた20世紀絵画が大きく据えられ、格子模様の壁、赤・緑・黄の原色、横縞のドレス、楕円の鏡の中の暗い像が画面を埋める。上部に置かれた灰色の英字タイトルと黒の和文・著者名は最小限にとどめられ、絵そのものに語らせる構えだ。一冊の本を、ひとつの展示室として差し出すような装丁。
著井上荒野
装丁大久保明子
装画yasuo-range
文藝春秋
文学・評論