
古代ギリシアの哲学者ソクラテスを、神格化された賢者ではなく「われらが時代の人」として描き直す評伝。冗談好きで容貌に屈託を抱えた一人の人間としての肖像を、英国の歴史家による筆致で辿る。表紙はざらつきのある生成り地に、線一本で起こされたソクラテスの胸像が淡いブルーグレーで置かれる。眉も髭もにじむように引かれ、控えめな欧文タイトルが上に小さく添えられるのみ。下半分を覆う帯の力強い明朝が、肩の力を抜いた線画とちょうど均衡を取り、人物の輪郭をいっそう柔らかく浮かび上がらせている。
著いとうせいこう
装丁佐藤亜沙美
河出書房新社 / 2014年
文学・評論