
音楽コンクールに集う若き才能たちが、合衆国という巨大な実験国家の現在地を映し出す長篇。黒地のカバーに、紫と肌色の絵具がにじむような筆致で人物の輪郭が浮かび、そこへ手書きの五線譜と音符が斜めに流れ込む。ギターを携えた人影と立ち尽くす二人の姿は半ば光に溶け、輪郭も旋律もどこか不確かなまま画面に漂う。タイトルと著者名は下半に白の明朝で静かに置かれ、混沌とした上半の絵と拮抗する。揺らぐ国の輪郭と、鳴り止まぬ音の残響を一枚に閉じ込めた装い。

著坂口恭平
装丁新潮社装幀室
カバー写真奥山由之
新潮社 / 2018年
文学・評論