
信州の森を舞台に、傷を抱えた少女と大型犬、そして伯父の静かな日々を描く長篇。深い湿度のある緑が画面を覆い、木漏れ日が地面の苔と下生えに落ちる森のなかを、リュックを背負った二人と犬がこちらに背を向けて歩いていく。柔らかな筆致のイラストレーションに、縦組みの白い明朝体タイトルが涼やかに重なり、英文の小見出しが余白に添えられる。森の奥行きと足音までも聞こえそうな静けさが、人と犬が並んで歩く時間の重さを、装丁の側から穏やかに支えている。
著津村記久子
装丁名久井直子
装画山城えりか
集英社 / 2014年
文学・評論