
オランダ文学の翻訳作品。スフルクという名の老犬と、人生に疲れた独身男の特別な土曜日を描く小説で、リブリス文学賞を受賞している。鮮やかな黄色の地に、茶と白のぶち模様のスパニエルらしき犬を横顔で配し、画面外から伸びる手がそっと頭に触れる構図。輪郭をぼかした絵筆のタッチと滲みが、犬の毛並みのやわらかさと光の暖かさを伝える。タイトルは右側に縦組みで控えめに置かれ、原題の手書き風欧文が上部に添えられている。犬とひとの境界が溶け合う一日の、静かな手ざわりがそのまま装画に宿っている。

著七月隆文
装丁川谷康久
装画高野苺
新潮社 / 2022年
文学・評論