
江戸を舞台にした人情味あふれる一膳めし屋「丸九」を描くシリーズの第五作。市井の人々の機微と、季節の食材がもたらすささやかな幸福が、やわらかな筆致で綴られる。表紙は、青と白の格子に紺の前掛けを重ねた女性が、葉つきの大根と小さな黄色い花を抱える縦長の構図。上半分の淡い水色から下半分の薄紅へと移ろうグラデーションが、夜明けや夕景を思わせる時間の気配を漂わせ、桃色で抜かれた手書き風のタイトル文字が画面に温度を添える。日々の食卓に宿る情景と、それを慈しむまなざしが、画と書の余白のなかで静かに重なり合う。
著梶よう子
装丁アルビレオ
装画高杉千明
角川春樹事務所 / 2021年
文学・評論